
小さいころに作った、手作りのかたたたきけん。
画用紙を切って、色えんぴつで塗って、ひもをつけた、あのけん。
「おとうさんへ。いつもありがとう」って、
ひらがなで書いた、あのけん。
もう何十年も前のことなのに。
子どものころは、父の日が楽しみだった。
何を作ろうか、何を贈ろうか、それを考える時間がすきだった。
父はいつも大げさなくらい喜んでくれた。
「世界一だ」
とか言いながら、照れくさそうに笑っていた。
その顔が見たくて、毎年一生懸命考えていた気がする。
大人になって、仕事が忙しくなって。
父の日が近づいても、
何も準備できないまま過ぎていく年が続いた。
渡しそびれた、
という感覚さえ、いつかうすれていった。
でも父は、ずっと覚えていてくれた。
里帰り出産で、実家に1か月いた。
おなかが大きくて、思うように動けなかった。
母がごはんを作ってくれて、
父が買い物に行ってくれて、
なんだか子どものころに戻ったみたいな、
あたたかい時間だった。
ある夜、父が財布を探していた。
テーブルの上に、中身をぜんぶ出した。
そこにあった。
くたくたになった、画用紙のけん。
ひもはほつれかけていて、色もすっかり薄くなっていた。
でも、ちゃんとそこにあった。
「まだ持ってたの」
そう聞いたら、
父は少し照れながら
「当たり前だろ」
と言った。
おなかの中の子に、声をかけたくなった。
おじいちゃんはね、こういう人なんだよ、って。
あのとき生まれた子供は、もうすぐ8歳になる。
先日、息子が書いた似顔絵を、祖父に送った。
電話越しに
「世界一だ」
と言う声が聞こえて、
ああ、この人はずっとこうなんだな、と思った。
うれしくて、少し笑ってしまった。
父の日って、特別な日じゃなくてもいいのかもしれない。
くたくたになっても財布から出さない人に、
「今年もありがとう」って気持ちを渡す日。
それだけで、じゅうぶんだと思う。
今年もちゃんと、贈ろうと思う。
今年の父の日におすすめしたいギフトは、こちらにまとめています。
この記事を書いた人

30代在宅ワーカーのさこりです。
小学生と保育園児の子育てをしながら、
暮らし・子育て・商品レビュー・副業体験を発信しています。
少しでも参考になれば嬉しいです。
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